研究室の紹介

果樹園芸学研究室の歴史

初代の菊池秋雄教授(教授期:1926年~1943年)は,明治から大正にかけて西洋から導入された多くの果樹類の生理・生態学的研究を行いました.ニホンナシの品種改良およびその主要形質の遺伝に関して長年研究を続け,「偏父性不親和(交雑組み合わせによって,交雑実生の半数の個体は父親品種と不親和となる)」現象を見いだすなど大きな業績を残しました.育成された新品種のなかでも黒斑病抵抗性があり品質のすぐれる‘菊水’‘八雲’‘新高’は特に有名です.‘菊水’は現在の人気品種‘幸水’‘新水’の親品種として利用されました.日本の果樹園芸学の黎明期を支え,数々の名著書を残したことでも有名です.
小林 章教授(教授期:1948年~1973年)は,戦後の果樹園の復興期で果樹の栽培面積が飛躍的に拡大していった時代の果樹園芸学を支えました.果樹の温度環境・栄養生理・土壌環境・光環境に関する研究を進めました.特にブドウの日長反応性や果実の肥大・成熟・品質に及ぼす温度の影響について調査した結果は,ブドウ適地の選定や施設ブドウの温度管理の実際に大きく貢献しました.
苫名 孝教授(教授期:1973年~1986年)は,果樹産業が量的生産から高品質果実の生産へ転換し,施設栽培が急増していった時代の果樹園芸学を支えました.特に果実温度と果実の発育・成熟に関する研究を進めました.果樹生産を目的とする果樹園芸にあっては果実の生態を一義的に考えるべきであるとの立場から一連の主要果樹を対象に研究を進めました.
杉浦 明教授(教授期:1986年~2002年)は,カキの脱渋性に関する研究を精力的に進めました.完全甘柿と不完全甘柿という2種類の脱渋機構の存在を明らかにするとともに,樹上脱渋方法を考案しました.この技術は和歌山県のブランド柿「紀ノ川ガキ」に応用されています.また,カキの組織培養技術開発や胚乳培養による倍数体育成法も開発しました.
米森敬三教授(教授期:2002年~2015年)は,カキ属や熱帯果樹の系統分類やカキのタンニン蓄積機構に関する研究を進めました.米森教授が開発したカキの甘渋性判別マーカーは,甘柿育種における選抜マーカーとして育種現場で利用されており,甘ガキの新品種の育成に有効利用されています.