研究内容

休眠制御機構

温帯果樹の多くは,冬季には活動を休止し休眠とよばれる状態で越冬します.開花には一定時間以上の低温遭遇が必要であり,開花時期決定には秋から春にかけての温度変化が影響しています.近年の気候変動により,低温不足による開花の不揃い,あるいは開花前進による霜害の多発など,果樹の栽培現場でいくつかの問題が生じています.本研究室では,温帯果樹の休眠の制御機構の解明とその人為制御法の開発を目指して研究を行っています.

第1図 亜熱帯地域で露地栽培されているニホンスモモの様子.

休眠覚醒に必要な低温要求量が十分に満たされず,同じ枝のなかで開花ステージが同調していない.

第2図 低温に応答する休眠制御遺伝子PmDAM6遺伝子の発現変化

‘南高’は低温64日目で‘二青梅’は低温32日目で明確な休眠覚醒が観察された.両品種とも低温にさらされない対照実験では休眠から覚醒しなかった.‘南高’では低温64日目に,‘二青梅’では低温16-32日目に,PmDAM6遺伝子発現量の低下がみられた.一方,非低温処理区では発現低下がみられなかった.現在,休眠を正に制御する低温応答性転写因子であるDAM遺伝子のシグナル伝達経路の解明を試みている.

参考資料

  • Yamane, H. (2014) Regulation of bud dormancy and bud break in Japanese apricot (Prunus mume Siebold & Zucc.) and peach [Prunus persica (L.) Batsch]: A summary of recent studies. J. Japan. Soc. Hort. Sci. 83: 187-202.