研究内容

雌雄性制御機構

「性」の決定は生物が進化の中で獲得した多様性の維持のための機構の一つであり, 作物の育種・栽培の両面において最大限に考慮されるべき重要形質です. しかし, 植物における性決定機構はこれまで一部の植物でしか研究されておらず, 特に, 多くの動物と同様に雌雄が明確に分離する性表現(雌雄異株性)の決定機構はこれまでいずれの植物種においても明らかにされていませんでした. 本研究室では, 創設以来長きにわたって収集を続けているカキ (Diospyros kaki) とその近縁にあたるカキ属植物を用いて, その性決定機構の解明に臨んでいます.

第1 図:OGI/MeGI システムによるカキ属植物の性決定メカニズム.

雄個体ではY 染色体上にあるOGI(Oppressor of meGI)が小分子RNA となって相同なMeGI(Male Growth Inhibitor)の発現を抑制する. MeGI は雄しべの発達を阻害するため, 発現量が多いと雌花になるが, OGI によって抑制されると雄花になる.

植物の性表現型は進化の中で一定ではなく, ゲノムの倍数化や栽培化の影響を受けて変化していくことが知られています. カキ属植物でも, 一般的に栽培されている「柿 (D. kaki)」では, OGI 遺伝子によって雄化が制御されているものの, かなり複雑な性表現型を示します. 今後はこのような多様性を持った性決定のメカニズム解明や, その成立・進化について考えていくとともに, キウイフルーツやブドウなどといった他科植物の性決定との共通性についても検討していきたいと思います.

参考資料

  • Akagi, T., I. M. Henry, R. Tao and L. Comai. 2014. A Y-chromosome-encoded small RNA acts as a sex determinant in persimmons. Science 346: 646-650.
  • Akagi, T., K. Kajita, T. Kibe, H. Morimura, T. Tsujimoto, S. Nishiyama, T. Kawai, H. Yamane, and R. Tao. 2014. Development of molecular markers associated with sexuality in Diospyros lotus L. and their application in D. kaki Thunb. J.Japan. Soc. Hort. Sci. 83: 214-221.